M&Aセカンドオピニオンの重要性|その会社売却、本当に進めて大丈夫ですか?

価格・スキーム・契約リスクを「第三者視点」で妥当性検証する

「このままM&Aを進めていいのだろうか」

「提示された譲渡価格は、客観的に見て妥当なのだろうか」

「仲介会社からは“今が売り時だ”と急かされるが、前提は正しいのか」

 会社売却は、経営者様にとって人生最大の資本配分を決定する局面です。長年心血を注いできた事業の価値を確定させるこのプロセスにおいて、売り手(経営者)と、買い手や仲介会社の間には、どうしても「経験値」と「情報量」の大きな差が生じます。この情報の非対称性を埋めないまま意思決定を下すことは、価格、条件、あるいは売却後の責任範囲において、後戻りできない損失を確定させるリスクを孕んでいます。

 そこで今、欧米のみならず日本のM&A市場で普及しているのが、利害関係のない第三者が現在の提案内容を点検する「M&Aセカンドオピニオン」です。

本稿では、なぜセカンドオピニオンが必要なのか、そして経営者が契約書に判(印)を押す前に検証すべき「4つの核心」について、専門家として、そして一人の実務家として詳しく解説します。

目次

1. なぜ、今M&Aに「セカンドオピニオン」が必要なのか

 医療の世界でセカンドオピニオンが定着したように、M&Aにおいても「主治医(担当仲介者)」以外の意見を仰ぐことは、リスクマネジメントの観点から極めて合理的です。

仲介モデルが内包する「構造的圧力」

 日本のM&A市場で主流となっている「仲介(双方代理に近い形式)」は、売り手と買い手を引き合わせ、成約させることで成功報酬を得るビジネスモデルです。これは効率的なマッチングを実現する優れた仕組みである一方、構造上、以下の事態を引き起こすインセンティブが働きやすい側面があります。

  • 検討期間の短縮: 「他社に取られる」「市況が悪化する」といった理由で、十分な検討時間を置かずに決断を促す。
  • 条件の深掘り不足: 成約のハードルを下げるため、売り手の潜在的な希望(価格や雇用条件)を買い手の許容範囲に寄せて調整する。
  • リスクの説明不足: 契約書内の複雑な免責条項や表明保証のリスクを、成約の障害にならないよう「一般的な内容です」と簡略化して説明する。

 これらは担当者の誠実性の問題以上に、ビジネスモデルとしての「成約への圧力」から生じるものです。セカンドオピニオンは、この構造的な偏りを中和し、経営者が「客観的な事実」に基づいて判断を下すための防波堤となります。

2. セカンドオピニオンで検証する「4つの核心」

 当社のセカンドオピニオンサービスでは、単なる数字のチェックに留まらず、以下の4つの観点から多角的にレビューを行います。

① 企業価値評価(バリュエーション)の妥当性

 最も多く寄せられる相談は「提示された金額は適正か」という点です。中小企業のM&Aでは「時価純資産+営業利益3~5年分」という簡便法が多用されますが、重要なのは計算式そのものではなく、そこに代入される「前提」の妥当性です。

  • EBITDA(イービットディーエー)の正常化:※EBITDAとは 営業利益に減価償却費を足し戻した、簡易的なキャッシュフロー指標。 実務では、オーナー個人の経費や役員報酬の適正化、一過性の損益を除外する「正常化損益」の計算が鍵となります。ここでの調整が不十分だと、本来の収益力が過小評価される可能性があります。
  • マルチプル(倍率)の整合性: 業種、地域、成長性、顧客構成(特定の1社に依存していないか)などを照らし合わせ、その倍率が現在の市場相場と乖離していないかを検証します。
  • 非事業資産・余剰資金の扱い: 本業に関係のない不動産や、事業継続に不要な過剰現預金が適切に「プラスアルファ」として評価されているかをチェックします。

② 売却判断そのものの是非(人生設計との整合)

 「今、本当に売るべきか」という問いに対し、私たちは成約を目的としないため、状況によっては「今は売却を中止、または延期すべきである」という結論も厭いません。

  • タイミングの検証: 資本コスト、業界の再編サイクル、自社の業績トレンドを分析し、あと1〜2年の「磨き上げ」を行うことで価値が劇的に向上する可能性はないかを検討します。
  • ポストM&Aのリスク: 売却後のロックアップ期間(継続勤務義務)や、役割を失うことによる心理的影響、コミュニティとの断絶など、経営者の人生設計におけるリスクを見立てます。
  • 代替案との比較: 親族内承継、親密な役員への承継(MBO)、あるいは資本提携に留めるなど、全株式譲渡以外の選択肢を改めて比較検討します。

③ スキームの合理性と税務コスト(手残り金額の最大化)

 M&Aにおいて経営者が注目すべきは「譲渡額面」ではなく、すべての税金を支払った後の「最終手残り(ネットキャッシュ)」です。

  • 税後手取りのシミュレーション: 株式譲渡(約20%の分離課税)と事業譲渡(法人税+配当課税)では、手残り金額に数千万円から数億円の差が出ることがあります。
  • 経営者保証の解除: スキームによっては個人の連帯保証が外れにくいケースがあります。確実に保証を切り離すための法的な設計を確認します。
  • 資産の事前整理: 会社に残したい資産、個人で引き取りたい資産を、税務上リスクのない形で事前に切り分けるアドバイスを行います。

④ 最終契約書(SPA等)に潜む将来リスク

基本合意書(MOU)から最終契約書(SPA:Stock Purchase Agreement)に至る過程で、経営者が見落としやすい「地雷」を精査します。

  • 表明保証・補償条項:※表明保証(ひょうめいほしょう)とは 財務や労務などの内容が真実であることを売り手が保証すること。 売却後に予期せぬトラブル(未払い残業代や税務指摘など)が発覚した際、譲渡代金の返還を求められるリスクがあります。責任の範囲、期間、金額の上限(キャップ)が、売り手にとって過酷すぎないかを検証します。
  • 表明保証保険(R&W保険)の検討: 万が一の損害賠償リスクを保険でカバーできるか、その費用対効果と交渉戦略をアドバイスします。
  • アーンアウト条項:※アーンアウトとは 譲渡後の業績目標の達成度合いに応じて、後から譲渡代金を追加で支払う仕組み。 買い手の恣意的な会計操作によって支払いが拒否されないよう、定義や測定方法が明確になっているかを確認します。

3. DD(デューデリジェンス)前後が最も危険なフェーズ

 セカンドオピニオンのご相談が最も増えるのは、基本合意を締結し、DD(買収監査)が始まる直前です。

 この局面では、買い手側が雇った公認会計士や弁護士による徹底的な調査が行われます。経営者様は日常業務をこなしながら、膨大な資料請求と厳しい質問攻めに対応しなければならず、精神的に非常に疲弊します。この時期に準備不足や論点整理の甘さがあると、最終段階で**「大幅な減額提示」を受けたり、最悪の場合は「破談(ブレイク)」に追い込まれたりします。

 私たちは「買い手がどこを突き、どこを懸念するか」という投資家視点を持ち合わせているため、DD前に論点を潰し、減額リスクを最小化するための「プリDD(事前磨き上げ)」を支援します。

4. セカンドオピニオンを推奨する経営者様

 以下のような状況に一つでも該当する場合、第三者による点検を受ける費用対効果は極めて高いと言えます。

  1. 既に特定の仲介会社や金融機関から具体的な条件提示を受けている
  2. 仲介担当者の説明が「成約を急いでいる」ように感じ、違和感がある
  3. 提示された価格の根拠(EBITDA倍率など)が、自身の体感と乖離している
  4. 最終契約書の「表明保証」や「ロックアップ(拘束期間)」の条件に不安がある
  5. DDを控えており、どのような指摘を受けるか、どう回答すべきか不安である

5. 守秘義務とご相談の流れ

 セカンドオピニオンは、現在進行中の案件を否定するためのものではなく、その意思決定に「確信」を持っていただくためのものです。

  • 完全な守秘義務: ご相談いただいた事実、および資料の内容は、当社の厳格な情報管理体制のもとで守られます。現在の依頼先に知られることはありません。
  • 資料共有の任意性: 可能な範囲で資料を共有いただければ具体的な検証が可能ですが、まずはお話ベースでの概況診断も承ります。
  • 明確な結論の提示: 「そのまま進めるべき」「この条件だけは修正交渉すべき」「一旦立ち止まるべき」といった指針を、忖度なくお伝えします。

結びに:成約ではなく「数年後の納得」を基準にする

 M&Aは、会社の「出口」であると同時に、経営者様にとっては新しい人生の「入口」です。

 大切に育ててきた会社を託す決断において、少しでも「納得がいかない」「腑に落ちない」と感じるなら、その直感は無視すべきではありません。違和感を放置して押印してしまえば、後から修正することは不可能です。私たちのゴールは、単なる成約ではありません。経営者様が5年後、10年後に振り返ったとき、「あの時、第三者の視点を入れて納得して決断して本当に良かった」と思っていただけること。その「納得の質」こそが、私たちの介在価値です。

代表プロフィール

プライマリーアドバイザリー株式会社 代表取締役 内野 哲

東証プライム上場企業グループ会社の代表取締役社長として、DX・Webマーケティング支援事業を経営。経営実務におけるファイナンス経験を軸に、M&Aアドバイザリー事業を創業。 現在は自己勘定投資会社の経営も並行して行い、プロ経営者としての「事業運営視点」と、プロ投資家としての「資本論理」の双方から、売り手経営者の事業価値最大化を支援している。

  • 経済産業省 中小企業庁 M&A支援機関登録
  • 日本経営財務研究学会(JFA) 在籍
  • 東京商工会議所 登録
  • M&Aシニアエキスパート資格保有

M&Aセカンドオピニオンのご案内(有料コンサルティング)

 当社では、仲介やマッチングを前提としない、中立公正な立場での意思決定支援を提供しております。本サービスは、質の高いアドバイスを担保するため、経営者ご本人様からのご相談に限定しております。

  • 提案価格・スキームの妥当性検証
  • SPA(最終契約書)のリスク精査
  • DD前の論点整理と減額対策

現在進行中の案件に不安をお持ちの方は、下記詳細ページよりお問い合わせください。代表の内野が機密保持を厳守のうえ、直接対応させていただきます。

[セカンドオピニオンサービスの詳細・お問い合わせはこちら]

※本記事は一般的な情報の提供を目的としたものであり、個別の案件については必ず税理士、弁護士等の専門家にご相談ください。


プライマリーアドバイザリー株式会社
代表取締役 内野 哲

M&A仲介業、M&Aアドバイザリー。前職は東証プライム上場グループ会社の代表取締役社長として、DX・Webマーケティング支援事業を経営、経営実務としてのファイナンス経験を活かしてM&Aアドバイザリー事業を創業。並行して自己勘定投資会社も経営し、プロ経営者・プロ投資家の双方の視点で顧客の事業価値最大化を支援しています。

経済産業省中小企業庁M&A支援機関登録制度、日本経営財務研究学会(JFA:Japan Finance Association)在籍、東京商工会議所登録。M&Aシニアエキスパート資格保有。

M&Aセカンドオピニオンサービス(売却可否・条件妥当性レビュー)
 当社では、他社M&A会社から提示された株価査定・取引条件について、利害関係のない第三者として妥当性を検証するセカンドオピニオンサービスを提供しています。

○企業価値評価(株価算定)
○ 売却判断そのものの是非
○ 提示条件・スキームの合理性
○ 経営者・従業員・株主に及ぶリスク

 総合的に検討し、「進めるべきか/立ち止まるべきか」を明確にお伝えします。
本サービスは、成約を前提とした仲介・マッチング業務ではありません。
※条件次第では「売却を見送るべき」と結論づける場合があります。

誤った意思決定を避けるための判断支援に特化しています。守秘義務を厳守のうえ、経営者様ご本人からのご相談に限定して対応いたします。

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