アイズ<5242>によるrimad買収の企業価値評価分析


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案件概要

 株式会社アイズ(証券コード5242、東証グロース上場)は、金融サービス分野の口コミ・比較が可能なマッチングプラットフォームを運営する rimad株式会社(埼玉県さいたま市所在)を完全子会社化することを決議しました。

  • 取得日:2025年9月1日予定
  • 取得価額:2億2,400万円(株式213百万円+アドバイザリー費用11百万円)
  • 対象会社:rimad株式会社(2024年設立、資本金100万円)
  • 事業内容:金融サービスの口コミ・比較プラットフォーム運営
  • 直近実績(2025年5月期)
    • 売上高:4,800万円
    • 営業利益:1,100万円
    • 経常利益:1,100万円
    • 当期純利益:800万円
    • 総資産:3,200万円
    • 純資産:900万円

 本買収は、アイズが展開する広告媒体資料プラットフォーム「メディアレーダー」との 事業シナジー を目的とし、既存プラットフォーム利用者に対するクロスセルやデータベース拡充が見込まれています。

被買収企業を調査すると、社会保険被保険者1名(代表取締役)、会社の住所が埼玉県のアパートとなっており、実質的にはサイトM&Aの要素が強いディールだと考えられます。


バリュエーション手法による分析

(1) 年買法(利益還元法)

rimadの営業利益は 1,100万円。ITプラットフォーム事業は成長性が高い一方、創業間もない企業で事業リスクも大きい。中小ベンチャーM&A市場では、営業利益の 3〜6年買程度が相場感。

  • 3年買:3,300万円
  • 5年買:5,500万円
  • 6年買:6,600万円

→ 年買法での評価レンジは 3,300〜6,600万円。実際の買収価額(2億2,400万円)はこれを大きく上回る。


(2) DCF法(ディスカウント・キャッシュフロー法)

DCF法を仮定計算。以下を前提に置く。

  • 売上成長率:年30%(プラットフォームのスケール期待)
  • 営業利益率:現状23%を維持
  • 割引率  :15%(リスク高のため)
  • 予測期間 :5年

計算すると、将来CFの割引現在価値は 約7,000〜8,000万円程度に収束。
高成長を見込んでも、DCF評価は1億円未満となるのが妥当。


(3) EBITDA倍率比較

rimadの営業利益1,100万円 ≒ EBITDAと仮定。国内のグロース市場におけるIT・プラットフォーム系のEV/EBITDAは 8〜15倍程度が多い。

  • 10倍適用:1.1億円
  • 15倍適用:1.65億円

→ マルチプルを用いても、買収価額2.24億円は依然として割高。


買収価額との差異とシナジー評価

1. バリュエーション比較

  • 年買法:0.33〜0.66億円
  • DCF法:0.7〜0.8億円
  • EBITDA倍率:1.1〜1.65億円
  • 実際の買収価額:2.24億円

→ いずれの算定手法においても、買収価額は評価額を大きく上回っており、プレミアムが極めて高い

2. プレミアムの水準

最大評価値(EBITDA15倍=1.65億円)と比較しても、買収価額との差は 約0.6億円
年買法基準との差は 約1.6〜1.9億円
→ この差額が、アイズが見込む シナジー価値 と解される。

3. シナジーの内訳想定

  • ユーザー基盤の相互送客:「メディアレーダー」ユーザーに金融サービス比較を横展開
  • 広告主のクロスセル:広告代理店や金融機関に対し、両プラットフォームでのデータ活用を促進
  • データベース価値:金融サービス口コミデータは広告・PR領域での分析活用が可能
  • ブランド育成による成長加速:設立1年で売上4,800万円を達成しており、高成長を維持できると判断

主要財務指標(2025年5月期、rimad)

  • 売上高:4,800万円
  • 営業利益:1,100万円
  • 営業利益率:22.9%
  • 当期純利益:800万円
  • 総資産:3,200万円
  • 純資産:900万円
  • ROE:88.9%(800万円÷900万円)
  • ROA:25.0%(800万円÷3,200万円)
  • 自己資本比率:28.1%(900万円÷3,200万円)

※ROEは極めて高いが、これは設立間もない企業特有の低資本構造によるもの。


総合見解

 rimadの財務基盤は小規模であり、単独の収益力に基づくバリュエーションでは1億円以下と算定されるのが妥当です。しかし、アイズは プラットフォーム事業の横展開による高いシナジー を見込み、2.24億円というプレミアムを支払いました。

この判断は、財務指標に基づけば「割高」と評価されますが、ニッチな金融サービス、そしてSEOを評価したウェブサイトの評価に重みをおいた買収だと考えられます。

―この記事の監修者―

プライマリーアドバイザリー株式会社

代表取締役 内野 哲

一般社団法人 金融財政事情研究会 M&Aシニアエキスパート/東証プライム上場企業グループ会社代表取締役社長を経てM&Aアドバイザリー事業創業/自己勘定投資会社にて投資業/企業価値評価、M&Aスキーム設計に精通

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