1. エグゼクティブサマリー
- 2025年9月、相次いでM&A仲介会社を買収。
- 業界は「再編期」に移行し、ロールアップが加速。
- 規制強化や競争激化により、従来型の高収益モデルは持続困難。
2025年9月1日、ヒューマンクリエイションホールディングスが相次いでM&A仲介会社を買収しました。これは一過性の事象ではなく、M&A仲介業界が本格的に再編フェーズへ突入した象徴的な出来事です。背景には、競争激化・市場成熟化・規制環境の変化といった構造要因があります。今後、業界は「総合仲介型」と「業界特化型」に二極化し、生き残りの条件は差別化戦略にあります。
2. M&A仲介業の現状分析
日本の中小企業M&A市場は事業承継ニーズを背景に拡大基調にあります。年間の公表件数は増加を続け、特に2020年代以降は後継者不足の顕在化により「売り手市場」が形成されています。しかし、プレイヤーの参入増加に伴い競争は激化。案件の情報開示や価格競争により、従来の高マージン体質は修正局面を迎えています。
従来、仲介会社の収益源は「成功報酬」が中心でした。案件の大型化・競争激化により、報酬率の低下圧力が強まっています。さらに、金融庁による顧客利益相反の監視強化により、仲介モデルは規制リスクも抱える状況です。
3. 業界再編の動向
ヒューマンクリエイションHDのように、複数の仲介会社を統合する「ロールアップ」は今後加速する可能性が高いです。目的は以下の通りです。
- 案件情報網の拡大:買い手・売り手双方のネットワークを統合
- スケールメリット:システム投資や専門人材を共有
- ブランド強化:業界内での信用力向上
ストライク、日本M&Aセンター、M&A総研の3社が「総合型」として市場シェアを確立しつつあります。一方、中堅以下の仲介会社は「業界特化型」「スキーム特化型」に転じなければ差別化困難になっていくと予想します。
4. 業界特化の必然性
筆者は20年以上、IT・WEB広告代理業界を現場で見てきました。当初は総合代理店型が主流でしたが、電通・博報堂など大手に価格競争で敗北し撤退が相次ぎました。その後、金融・不動産・健康食品などの業界特化型代理店が生まれ、大手との競争に勝ち残りました。現在ではYouTubeやTikTok特化した代理店が買収対象となっていたりなど、「特化型は買収価値がある」ことが証明されています。
同様の流れがM&A仲介にも適用されます。特化型の強みは以下です。
- 専門知識:法規制、業界慣行、財務構造に即した助言
- 買い手開拓力:業界固有のネットワークを保有
- 案件の成約率向上:一般論ではなく業界特性に即したバリュエーション
5. 今後の業界シナリオ
仲介会社は次の二軸でポジショニングを決めていくと考えられます。
- 縦軸:業界特化
建設、IT、医療、物流、製造など - 横軸:スキーム特化
事業売却、会社売却、買取再販、事業再生
この二軸の組み合わせにより、「建設業×事業再生」「IT業界×事業売却」などのニッチ特化モデルが成立します。大手は「案件情報のハブ」としての機能を強める一方、特化型は「専門知識による成約率向上」で存在感を発揮します。今後は、大手が特化型をM&Aで取り込む動きが加速するでしょう。
6. 結論
- 大手総合型によるロールアップ戦略
- 中堅以下の業界特化・スキーム特化戦略
M&A仲介業界は今後、の二極化が進行します。当社はIT・WEBに特化することで、この再編の波を機会に変えていきます。業界特化型は単なるニッチではなく、買収価値を持つ存在です。広告代理業界が示した先例を踏まえると、この方向性こそがM&A仲介業の持続的成長に不可欠だと考えています。
7. 当社の立ち位置:IT・WEB特化戦略
当社は、IT・WEB領域に特化したM&A仲介を展開しています。理由は以下の通りです。
- 市場の成長性:SaaS、DX需要、Web3など新分野が拡大
- 専門知識:IT分野で数百億円の売上を構築した実績
- ネットワーク優位性:業界歴20年超であり、上場企業創業者等に強いネットワーク
この専門性により、単なる仲介ではなく、企業価値評価から顧客紹介、PMI(統合作業)まで一気通貫で支援できる点が差別化要因です。
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