飲食店M&A事例:CS-C<9258>がラーメン店運営会社を買収

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赤字・純資産マイナス企業でも1億円超で売れる理由

DX企業によるラーメン店買収事例から読み解く「中小企業M&Aバリュエーションの本質」。近年、中小企業M&Aの現場では、「黒字でなければ売れない」「純資産がマイナスなら価値はゼロ」という常識が、静かに崩れつつあります。

 今回取り上げるのは、マーケティングDXを主力とする企業が、背脂系ラーメン店を運営する会社を1億5,300万円で買収した事例です。

対象会社は、

  • 売上高:約4.2億円
  • 営業利益:▲1,750万円
  • 純資産:▲1,720万円

という、いわば赤字かつ債務超過に近い状態です。

それでも株式価値として約1.2億円が支払われました。本稿では、この取引を題材に、実務で使われる3つのバリュエーション手法を用いて、なぜこの価格が成立するのかを解説します。


なぜ「財務が悪い会社」でも売れるのか

結論から申し上げると、M&Aにおける価格は

過去の数字ではなく、将来のキャッシュフローに対して支払われる

という原則で決まります。

中小企業M&Aでは、

  • 黒字か赤字か
  • 純資産がプラスかマイナスか

必要条件ではあっても十分条件ではありません

重要なのは、

  • 改善可能性
  • 再現性
  • 買い手とのシナジー

です。

今回のケースは、「飲食店」ではなく「マーケティングの実証フィールド」として評価された点に本質があります。


バリュエーション① 純資産法

■ 純資産法とは

会社の資産から負債を差し引いた純資産(時価ベース)を、そのまま企業価値とみなす方法です。

■ 本件への当てはめ

  • 簿価純資産:▲17百万円

仮に資産を時価評価しても、大きな含み益がない限り、

純資産法の評価額:0円

となります。


■ それでも株式1.2億円が付いた理由

株式価値 120百万円
- 純資産 ▲17百万円
のれん相当 約137百万円

この137百万円は、

  • ブランド
  • 立地
  • レシピ
  • オペレーション
  • ファン層

といった帳簿に載らない無形の価値です。

純資産法は「下限値」であり、
M&A価格の決定打にはなりません。


バリュエーション② EV/EBITDA法

■ EV/EBITDA法とは

  • EV(Enterprise Value):事業価値
  • EBITDA:利払前・税引前・減価償却前利益

EV ÷ EBITDA = 何年分で回収できるかを示す指標です。


■ 本件の問題点

営業利益が赤字であるため、

EBITDA ≒ マイナス

倍率が計算不能

つまり、そのままでは使えません。


■ 実務で行われる「正規化EBITDA」

赤字企業の場合、以下を調整します。

  • 一時的な費用
  • オーナー過大報酬
  • 家族人件費
  • 原価率の改善余地

これにより、

「改善後のEBITDA」

を作ります。


■ 重要な示唆

買い手は、

「今いくら赤字か」

ではなく、

「2年後にEBITDAをいくら作れるか」

を見ています。


バリュエーション③ 類似比較法

■ 類似比較法とは

類似する会社や取引事例の倍率を当てはめる方法です。

中小飲食では、

  • EV/EBITDA
  • EV/売上高

がよく使われます。


■ 本件の売上倍率

株式価値120百万円 ÷ 売上419百万円
約0.29倍

中小飲食M&Aでは、0.2~0.5倍レンジは珍しくありません。

SaaSのような高倍率ビジネスと比較してはいけません。
業種ごとの常識が異なります。


なぜDX企業がラーメン店を買うのか

本件は「飲食事業への参入」ではありません。

買っているのは、

  • 自社マーケティングツールを試す実験場
  • 成功事例のショーケース
  • インバウンド集客モデル

です。

つまり、

ラーメン店 × マーケティング × データ

という事業モデルを買っています。


売り手が価格を上げるためにやるべきこと

① KPIの可視化

  • 来店数
  • 客単価
  • 原価率
  • 人件費率
  • 回転率
  • リピート率

② 労務リスクの解消

  • 未払残業ゼロ
  • 社保加入
  • 就業規則整備

③ 契約関係の整理

  • 賃貸借契約
  • 商標・ブランド帰属
  • 仕入契約


プライマリーアドバイザリー株式会社
代表取締役 内野 哲
M&A仲介・M&A売却・事業承継に特化した専門アドバイザリー

中小企業オーナー様を対象に、M&A売却・会社売却・事業承継に関する企業価値算定(株価算定)・売却判断の是非・取引条件の妥当性検証を行う独立系M&Aアドバイザリーです。

M&A仲介を前提とせず、「今、本当に売るべきか」「提示価格・条件は適正か」という
経営者にとって最も重要な判断に特化したコンサルティングを提供しています。

▼経歴と専門性
 前職では、東証プライム上場グループ会社の代表取締役社長として、DX・Webマーケティング支援事業を経営。経営実務におけるファイナンス、企業価値評価、投資判断を自ら担ってきました。

 その実務経験を背景に、「M&A仲介ありきでは意思決定を誤るケースが多い」という問題意識から中立・第三者の立場で判断を支援するM&Aアドバイザリー事業を創業しました。

現在は自己勘定投資会社も並行して経営しており、
「プロ経営者」の実務視点と
「プロ投資家」の資本・リスク評価視点の双方から、
M&A売却における事業価値の最大化と意思決定リスクの最小化を支援しています。

▼公的資格・所属
 ・経済産業省 中小企業庁
 ・M&A支援機関登録制度 登録
 ・保有資格:M&Aシニアエキスパート
 ・所属学会:日本経営財務研究学会(JFA:Japan Finance Association)
 ・所属団体:東京商工会議所

▼M&Aセカンドオピニオンサービス
(M&A売却・事業承継の第三者レビュー)

「提示されたM&A条件は妥当か?」
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 当社では、他社M&A会社から提示された株価査定・売却価格・取引条件・スキームについて、
利害関係のない第三者として妥当性を検証するM&Aセカンドオピニオンサービスを提供しています。

▽主な検証内容
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 これらを総合的に分析し、「進めるべきか/立ち止まるべきか」を明確に提言します。

▽当社のスタンス
 本サービスは、成約を前提としたM&A仲介・マッチング業務ではありません。
 分析結果によっては、「売却を見送るべき」という結論に至る場合もあります。
 誤ったM&A売却判断を避け、最善の出口戦略を描くための意思決定支援に特化しています。

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